街行き村行き

今日は街へ、明日は村へ。その場所で考えたことを綴ります。

【ベスト5冊】2021年今年読んでよかった本

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2021年は、私にとって読書習慣を変えた年だった。

昨年までは読んだ本のアウトプット場所としては、読書会を活用していた。 課題本などには取り組まず、テーマフリーの読書会を中心に、自由に読みたい本を選んでいた。読書会は隔週で、それを期限に1冊の本を読み終え、読書好きな方々とおしゃべりする感覚で参加していた。

ところが、2021年春に東京から奈良へ引越すことになり、仕事も生活もガラリと変わり、読書コミュニティーもすぐには見つからず。 そんな中で、「読書習慣を続ける手段」として、ブログ書評を残してみることにした。

今までどおり隔週に1冊ほどのペースなので、更新できた記事は決して多くはない。 本を読み終えて「いざ書こう」と思っても、「なにがおもしろかったのか」「どんな発見があったのか」は、頭の中ではほとんど整理できていなかった。

本の中身を咀嚼し、自らの思考や経験と結びつけるには、それなりの時間がかかるのだ。 けれども、ひとつの記事にしてみることで、著者と対話ができたような気がして、”ただ読んだだけ”の読書にはない達成感も味わえた。

そんなわけで、来年からも「ブログで書評を書く」習慣は、続けていこうと思う。 一人で記事を書く作業はなかなか孤独なもので、以前のように読書会に参加したいなと思うこともある。 「読んだ本について書くこと」「読んだ本について話すこと」は、それぞれに違った魅力があるのだろう。

前置きが長くなったが、2021年読んでよかった本をピックアップしてみる。

三体Ⅱ 黒暗森林(劉慈欣)


2021年には『三体Ⅲ』の翻訳が出たということで、長い三部作もついに完結。 私はまだ『三体Ⅲ』は未読である。なぜなら、「もう先は読まんでもいい」と思えるほど、『三体Ⅱ』の結末が清々しかったから。

  • 人類vs三対人の頭脳バトル
  • 面壁者vs破壁人の頭脳バトル
  • 400年後のタイムリミット迫る中、加速していく物語
  • どんでん返しの結末

これが映画ならば、息もつかせぬ展開で目が回るかもしれない。 主人公が冷徹なヒロインだった前作と違って、今回の主人公羅輯(らしゅう)は平凡な大学教授という設定で好感が持てた。 また前作のような三体世界の殺伐とした世界観にとどまらず、羅輯の思考はロマンチストな一面もあり、物語をおもしろくしていた。

レビューを書いていたら、『三体Ⅲ』も気になってきた。 2022年早めに読んで、全巻通して語れるようになりたい。

人新世の「資本論」(斎藤 幸平)


マルクス「資本論」が再度脚光を浴びるきっかけをつくり、ベストセラーになった。 斎藤先生、メディアにも引っ張りだこで、テレビで柴咲コウと対談していたときにはびっくりして録画してみてしまった。

「脱成長コミュニズム」という言葉がとにかく強烈だが、今の閉塞感が拭えない日本人にとってはある意味で”しっくりくる”言葉に映ったのかもしれない。里山資本主義よりもさらに下流志向な「脱成長」という概念がここまで一般化するのは、経済成長が加速する米国や中国の状況と比べると、日本ならではの現象ではないか。

個人的には本書の後にビル・ゲイツの本やESG関連書籍を読んだこともあり、経済成長と環境問題は「デカップリングすべき」という考えの方がしっくりきた。 そういう意味では、ブームに乗ってすべてを鵜呑みにするのではなく、しばらく時間がたってから読み返してみたい。

斎藤先生は『100分de名著』の資本論解説も素晴らしかったし、今後もバッシングにめげずに活躍を続けてほしい。

クララとお日さま(カズオ・イシグロ)


本書は今年読んでおいて良かった。 カズオ・イシグロの現代社会へのメッセージを強く感じる一冊だった。

AIロボットは当然合理的な思考ができる存在だが、人間の不合理的な一面と向き合うことによって、「どのような思考で処理するべきか」が分からなくなってくる。合理的な思考ですべてを対処できたからといって、万事がうまくいくということはありえない。

ブログ記事にも書いたが、”AIロボットにとっての立派な生涯”は、”人間にとっての立派な生涯”とさして変わらないものなのかもしれない。 今後もGAFAを中心に人工知能技術の進化はめざましく進むだろうが、「その開発の目的がなにか」を見失わずに社会を変えていってほしいと思う。

▼ブログ記事 machiyukimurayuki.com

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか(ピーター・ティール)


欧米の起業家の著作というと、成果のスケールがデカすぎて読んでいて辟易することもあるが、本書は読みやすく、またメッセージもシンプルでベストセラーもうなずける内容だった。 「小さな独占からはじめる」という手法は、なにもGAFAのような巨大企業をつくることを想定せずとも、身近なビジネスの機会で参考になる考え方だ。

また内向的な経営者の思考を覗くにもベストな書籍だと感じた。

▼ブログ記事 machiyukimurayuki.com

地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる(ビル・ゲイツ)


本書は、気候変動問題を考えるにあたって、誰もがまず最初に手に取るべき本だろう。 把握すべき事項と数字が実にコンパクトにまとめられていて、図表による説明もわかりやすい。 それもそのはず。 書いているのは世界で最も著名な起業家であるビル・ゲイツ氏である。

気候変動問題のグローバルな動向は連日ニュースで報道されるが、基礎知識がないとついていけないトピックスも多い。まずは本書で「なにが起きているのか」を把握して、そこから「なにができるか」を考えてみる。

本書のような存在がベストセラーになることで、また世界中での環境課題への共通認識が変わっていくのだろう。本というのはネットメディアでの拡散と違って、じんわりではあるが社会全体を変えていく力になる。著者の20年ぶりの著作には、それほどのパワーが秘められていると感じた。

▼ブログ記事 machiyukimurayuki.com

以上、全5冊を取り上げた。

『ゼロ・トゥ・ワン』以外は、2020年以降に出版されたもので、なるべくタイムリーなものをセレクトした。 海外の著作が多いが、普段私は日本人の著作のものを好むので、今年は翻訳書に影響を受けた年だったといえる。

ほか古典と呼ばれる良書にも数多く出会った。 岡潔『春宵十話』、鴨長明『方丈記』、レイチェル・カーソン『センス・オブ・ワンダー』などなど。

2022年は、古典の比率を増やすこと、ジャンルを横断した読み方ができること、この2つを目標としてまた読書生活を楽しみたい。

2021/12/19