カズオ・イシグロ、ノーベル賞受賞後の最新作。 4月の発売以来、本屋で見かけるたびに、ひまわりと女の子の可愛らしい表紙に名作感が漂っていて、ずっと気になっていた。
テーマは人工知能とヒューマニティということで、著者がどんな未来を描いてくるのか、ワクワクしながら本書を読み進めた。
物語は、クララというAF(Artificial Friends; 人口親友)の一人称語りで進む。 ”「ショートヘアで、浅黒くて、服装も黒っぽくて」、親切そうな目を持つフランス人みたいなAF”であるクララ。 彼女は、果たして病弱な女の子ジョジーを救うことができるのだろうか。
人工知能というと、”感情を持たない存在”としてのイメージが先行するが、クララは人を観察し学習するほどに感情を豊かにしていく。 人が人工知能に求めるものは、単なる人間の代替としての”機械”から、心を癒やすための”親友”のような存在に進化していくのだろうか。
人工知能ロボットに劣等感情はあるか?
本作は敬体(ですます調)でおとぎ話のように語られる。 その体裁とは裏腹に、ディストピア小説さながらの、格差が拡大した残酷な人間社会模様も描かれる。
続きを読む