岡潔という関西出身の世界的数学者を知ったのは、つい最近のこと。
特に代表的なエッセイである『春宵十話』は、本のレビューサイトなどでもよく取り上げられていて、天才数学者の書くエッセイとはどのようなものだろう?と興味がわいた。
和歌山県橋本市生まれ、晩年は奈良で過ごしたということで、今の私の住環境にも近く、親近感もあった。
1963年発行と半世紀以上前に書かれた内容だが、リズムよく読みやすく、また難しい仏教用語と独特の比喩表現とのギャップが妙に「カッコいい」とも思える随筆集だった。
学問は頭でやらない。情緒の中心でやる。
「人の中心は情緒である。」
本書で何度も繰り返し述べられる言葉である。
情緒という言葉は普段から使うことがないのでイメージしにくいが、情緒不安定という言葉は今でも使うことがある。 そこで私は、情緒を「情緒不安定の逆の状態」と理解してみることにした。
つまりは、「心が平穏を保っていて、その人らしさが発揮できている状態」と考えた。
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