10年ぶりに再読して「井戸」について考える
初読は大学生の頃だったはずなので、約10年ぶりに読み返したことになる。
村上春樹の長編小説はカチッとしたあらすじがあるわけではないので、ストーリーや結末はほとんど忘れかけていた。
ただ、綿矢ノボル、加納クレタ、加納マルタ、笠原メイ、間宮中尉など個性豊かな”奇想天外な”キャラクターたちの印象だけは強く残っていて、懐かしい友人に10年ぶりに再会したような感覚を覚えた。
ねじまき鳥といえば、”井戸に入ってじっと考え込む”という場面につきる。 この行為が何を意味しているのか、学生だった当時の僕にはよくわからなかった。
けれども、20代のうちに何度か”シンドい”と思うような場面に遭遇した時に、 自分にとっての「井戸」はどこにあるのか、と無意識に探すようになっていた。
ひとりでじっと「井戸」に潜ることによって、見えてくる世界だってあるのだ、と。
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