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【全10選】聴いてよかったVoicy配信2022年1月〜2月

聴いてよかったVoicy配信

昨年200時間近く愛聴させてもらった音声プラットフォーム『Voicy』。 2022年に入ってからも引き続き楽しませてもらっている。

1月頃には、パーソナリティーさんが『私の聴いているパーソナリティーさんを紹介』というコーナーで次々と優良チャンネルを紹介されるので、またフォローする放送チャンネルが増えてしまった。

あとで振り返りやすいように、今回は私の興味のある5つのカテゴリに分類してまとめてみた。

  1. 読書
  2. ライフワーク・生き方
  3. 芸術・文化
  4. 政治・社会
  5. 投資・経営

パーソナリティーさんごとに得意とされるジャンルがあるものだが、専門以外での放送トピックスが面白かったりもする。 (余談というのは、素顔が覗けるようで魅力的だったりするものだ) そういう放送を備忘録的にメモっておくことも、この記事の目的のひとつだ。

2ヶ月分でまとめてみて気づいたが、北京五輪〜ウクライナ情勢のように世の中の動きが早いと2ヶ月前のトピックスでも古く感じてしまう。来月からは、1ヶ月分でまとめる方が熱が冷めなくて良いかもしれない。

1_読書

ミルクボーイと松下幸之助 - 朝倉 祐介 @Jockey723

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M-1決勝からミルクボーイのネタを思い出し、そこから松下幸之助の「素直な心」という言葉を連想する。 『君たちはどう生きるか』、『影響力の武器』からの引用を用いながら、「自分の意見を軌道修正する大切さ」を教えてくれる。 ひとつの時事ネタをもとに多様な本を連想させていくという、話の組み立てがすばらしく、読書好きにはたまらない放送だった。

#67 超一流になるのは才能か努力か その1 - 土方奈美(翻訳家) @NamiHijikata

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人間は正しい努力を積み重ねることで、進化することができる。パフォーマンスも向上させることができる。 天才が現れた時、私たちはどうしてもその「才能」を意識してしまうが、彼らは「努力する才能にも恵まれいた」ということを忘れてはいけない。

長い原稿を書く前に「小さなパーツ」をたくさん用意しておくノウハウ - 佐々木俊尚 @sasakitoshinao

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佐々木俊尚さんは、「思いついたときにボイスメモを残しておく」という日々の積み重ねが、アイデアの源泉になっているという。 いざ書こうと思ったときにすべてを思い出すなんて不可能とのこと。 物書きをしている人は「引き出し」をたくさん持っていたりするけれど、その秘密はアイデアとアイデアの組み合わせだったりする。 私もこの放送を聴いて、iPhoneのトップ画面に”録音”のショートカットを作ることにした。

2_ライフワーク・生き方

#250【目標】100ウィッシュリストを作ってみた - ひうらさとる @marikosatoru

#250【目標】100ウィッシュリストを作ってみた | ひうらさとる「ひうらさとるの漫画と温泉」/ Voicy - 音声プラットフォーム

年始にはウィッシュリストをつくりたくなる。 ひうらさとるさんは、NotionとCraftを使ったウィッシュリストの作成方法を紹介されていた。 「あのケーキ屋さんに行く」「近所の〇〇に行ってみる」程度の、身近なことでもウィッシュリストに登録しておくといいらしい。 「やりたいこと」は書き出せば叶う確率はぐっと上がるそうで、年始早々既に叶っているリストが増えているとのこと。 書き出して可視化すると、潜在意識の中に刷り込まれるのだろうか。

849 新しいことはひとりで始めろ 1人でやる効用5つ - oishi haru / ワーママはる @wa_mamaharu

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ワーママはるさんの考える、1人ではじめるメリット5選。 ①スピード②いつでもやめることができる③本気度が違う④違和感を大事にできる⑤コストがかからない 「軌道に乗せるまで」が得意な人と、「広げること」が得意な人とは、役割が違うのだろう。 私は仕事では「仲間とはじめる」ほうが好きだが、プライベートでは「ひとりではじめる」ほうが性に合っているかもしれない。

3_芸術・文化

826 映画『フレンチ・ディスパッチ』が最高だった - @dongurifm @dongurifm

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narumiさんが激推しされていたので、『フレンチ・ディスパッチ』みてきた。 ネット上の映画レビューでは「ウェス・アンダーソンにしては退屈」などと批判記事も多く見たけれど、ジャーナリズム愛に溢れた映画で、映像美は当然のことながら素晴らしく、(豪華キャストの登場も楽しく)、映画館でみてよかった。 ドングリFMはお二人の趣味趣向が微妙に違っていて、それぞれの「推し」が聞けるところがおもしろい。

4_政治・社会

2月15日藤井聡太さんを起用した広告で思うこと。 - 伊藤洋介 @itoyosuke_jp

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伊藤洋介さんは、藤井聡太さんにお菓子会社のスポンサーがつくことで、「おやつタイム」が妨害されないか心配されていた。 スポーツ選手のスポンサーの場合は、メーカーと共同製品などつくれて選手側のメリットも大きいだろうが、棋士となるとコラボできる領域が限られていて難しい。 これだけ注目を集めると、「メディアの横槍」や「スポンサーからの風当たり」も強くなるだろうが、「本業」に差し障りがないことを願う。

英会話サービスは、何で近年めちゃくちゃ安くなったの? - 大手町のランダムウォーカー【#会計クイズ】 @OTE_WALK

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オンライン英会話は、「物価水準の違い」を生かしたマッチングサービスである。 ここまでは想像できるけれど、他にも「国と国をつなぐ」マッチングを提供している会社があるという。 Wise(旧TransferWise)は、海外送金したい人同士の需要をつなぎ、手数料を抑えているサービス。 これぞ「潜在ニーズ」を掘り起こしたようなサービスだと感心した。

5_投資・経営

不便な世界に飛び込むだけで、圧倒的に「チャンス」が広がる話 - マナブ @manabubannai

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「誰よりも先に失敗すること」によって、「不便を解決するコンテンツ」が生まれ、それが本質的な利益につながるという話。 実績のある人の言う言葉なので、説得力がある。 マナブさんはしばらく音声配信はストップされるということ。 Voicyでは、日々の思考の断片みたいなものを生で聞ける絶好の機会になっていただけに、残念。

起業とはカレーのない世界でハヤシライスを作る〜声の履歴書70 - 緒方憲太郎(Voicy社長) @ogatakentaro

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「戦略的なファイナンス」ができる人材が求められている。 「音声プラットフォームの日本市場への浸透」に向けて、大規模な資金調達が必要となっている。 緒方社長のVoicy配信からは、高いハードルを次々と超えるべく邁進されている「熱量」が伝わってくる。 資金調達がうまくいってVoicyがさらに大きなサービスになるように応援し続けたい。

ウクライナ問題から、ロシア・東欧を舞台した長編小説「オリガ・モリソヴナの反語法」を読み返した

ウクライナ侵攻がはじまってしまった。 「軍事侵攻」という言葉を見聞きして、やりきれない気持ちになった。 グローバルに情報が開かれた現代においても、こんな暴挙がまかり通るのだ。

私は1冊の本を思い出し、読み返してみることにした。

「オリガ・モリソヴナの反語法」(米原万里・著)

スターリン政権下の、激動のロシア・東欧を生き抜いた踊り子の生涯を追った長編小説である。 著者はロシア語通訳者だった故・米原万里さんで、翻訳者・文筆家として活躍された方だ。

本書は彼女のプラハ・ソビエト学校時代の実体験をもとに書かれた物語だが、参考文献リストには日本語文献とロシア語文献併せて100冊近くの書籍があり、史実に基づいたノンフィクションの要素もたっぷり含まれている。独裁政権下での不条理な世界に生きた人々を、見事な筆致で描いてみせた傑作だ。

生涯にわたってロシアと社会主義に向き合ってきた米原万里さんの言葉に耳を傾ければ、「現代の不条理」を生き抜くヒントが見つかるかもしれない。 いま私たちにできることは、「突如として戦乱に巻き込まれた人たち」について想いを巡らせることではないだろうか。

「強く生きる女性たち」に励まされる

あらすじを簡単に紹介する。

舞台は1960年代のチェコ・プラハ。 家庭の事情でソビエト学校に入学した小学生の志摩は、舞踊教師、オリガ・モリソヴナに魅了される。 オリガは既にかなりの高齢の様だが、引き締まった肉体でダンスは天才的。

ただし先生が大げさに褒めたら要注意。 「美の極致!」などと言われればそれは罵倒の裏返し。 学校中を轟かす、独特の「反語法」を使うのだった。 その先生が突然長期に休みをとり、志摩の中の”謎”は深まるのだった。

オリガ先生はいったい何者だったのか? 30年後、ソ連の崩壊した翌年、42歳になった志摩はモスクワに赴く。

伝説の踊り子は、スターリン時代をどう生き抜いたのか。 驚愕の事実が次々と浮かび上がり、想像を絶する過酷な歴史が現れる。
(単行本の帯紹介文より引用)

本小説の登場人物たちは、みんな個性豊かで生き生きと描かれている。

小学校時代の憧れだった舞踊の老教師オリガ・モリソヴナ。 オリガと仲の良かった、フランス語の老教師エレオノーラ・ミハイロヴナ。

二人の謎を解明するのを手伝ってくれる、かつての級友たちも登場する。 親友で28年ぶりに再会したカーチャ。小学校時代にも踊りの天才として輝いていたジーナ。 エストラーダ劇場のプリマであるナターシャ、衣装係の老婦人マリヤ・イワノヴナ。

彼女たちの人生は、振り返って決して幸せなものだったとは言えないだろう。 スターリン政権下、第二次世界大戦下を生き抜いた二人の老教師は、大粛清で大切な人を失い、ラーゲリで壮絶な日々を過ごした。 再会した同級生たちも、混乱する政治情勢に巻き込まれながらも、なんとか生活を維持していた。

オリガを追うための重要な手がかりとなるガリーナ・エヴゲニエウナの獄中手記は、史実に基づいた記述なのだろう。 ラーゲリでの目を覆いたくなるようなエピソードの数々は、この世のものとは思えないほど残酷だ。 ナチス・ドイツのアウシュヴィッツを舞台にした「夜と霧」に通づる部分もある。

それでも、この小説に戦争文学としての「暗さ」のみに覆われていないのは、女性たちが運命に逃げることなく、強く生きているからだ。

「ああ神様! これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう。長生きはしてみるもんだ。こんな才能はじめてお目にかかるよ! あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだ」

小説の冒頭の言葉から。 オリガが過酷な生涯にも負けずに生き抜いてきた「力強さ」にあふれている。

彼女が使う反語法は、厳しい現実を笑い飛ばし、明るく生きるための術だったのだ。

米原万里さんの言葉「社会主義が悪なのではない」

文庫本には、巻末に池澤夏樹さんとの対談が掲載されている。

その中で、印象に残った言葉を紹介したい。

米原
 帰ってきたときにはすごく不自由に感じました。日本からプラハに行ったときより、帰ってきて日本の学校に入ったときのカルチャーショックのほうが大きかったですね。みんな違って当然だというのがプラハの学校の考え方で、だから何か共通点を見つけるととても喜ぶんですが、日本の場合は、みんな同じが当然で、みんな同じになることが幸せで、それから外れると劣等感を持ったり、不幸だと考えてたりする。だから違うのが許せない。それが最大のショックでした。

エッセイ集「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」では、彼女の小学生時代の楽しかった思い出についてたくさん語られている。

「ソビエト学校」で我々が想像するイメージとは裏腹に、自由闊達で生きやすい風土だったようだ。 どうやら、社会主義だから生きにくいというわけでもないらしい。

米原
  世界最高のチェロ奏者と言われているロストロポーヴィチについて通訳したことが何度かあるんですが、彼がもう亡命十六年目になったころ、殺されてもいいからロシアに帰りたいと言って、コンサートが終わった後、ウォツカをがぶ飲みして泣き出しちゃったんです。ロシアにいる間は才能があるだけでみんなが愛し、支えてくれたけれども、西側に来た途端にものすごい足の引っ張り合いと嫉妬で、自分はこういう世界を知らなかったから、それだけで心がずたずたになっていると言っていました。

彼にとって、才能は自分のものじゃなくて、神様が与えてくれたものなんです。モスクワ高等音楽院に入って、あまり練習しないのにすごくうまく弾けて、一生懸命努力しているのに自分より下手な人がいる。自分が努力して得たものならそれは自分のものだけれども、これは神から与えられたものだから自分のものではない。そう考えるわけです。

資本主義は競争社会であって、そこには当然ながら他社への嫉妬や蹴落としも生まれてしまう。 「才能は神様が与えてくれたもの」という考え方は、個人主義な欧米諸国ではなかなか理解されないものだろうか。

米原
 究極の極悪人が一人だけいるわけではなくて、悪がシステム的に分散されている。それこそが資本主義国の悪だと思うんです。スターリン時代のソビエトのような独裁体制の国は、悪い人は絶望的に悪い。その一方で、こんなに人がよくて大丈夫なのかと心配になるほどいい人がたくさんいます。でも、猜疑心を持たないいい人が巨悪を許す、という点では、いい人の罪も重い。

独裁体制の国は、「絶望的な悪人」が溢れる国というわけではない。 悪人は一部であり、いい人が巨悪を許すことで、悪のシステムが助長されてしまう。 民主主義、資本主義国家のシステムは、悪が分散しながら存在している。


米原さんの言葉を受け止めながら、今はひたすらにロシアを非難するべきではないのかもしれないと思えてきた。 当然ながら、「軍事侵攻」という決断は許されたものではない。 けれども事前に彼を説得する術はなかったのかのだろうかと振り返ると、西欧諸国が反省すべき点もあるだろう。

独裁的な決断のもとでは、善良な人たちが被害を受けている現実があるということ。
そこには、幾多の人々の運命を変えてしまっている現実があるということ。

私たちが忘れてはいけないことはそういうことだ。

遠い異国の出来事として片付けるべきではない。 事態が一刻も早く収束に向かうことを祈りたい。

【開館記念レポート】大阪中之島美術館へ行ってきた

2022年2月2日にオープンした「大阪中之島美術館」に行ってきた。

構想は約40年前の1983年。30年間の準備期間を経てやっと開館するという。 関西の美術ファンにとっても、大阪市民にとっても、念願だった美術館がついに完成したのだ。

「大阪中之島美術館」は、関西に新たに誕生したアートスポットとして、どんな展開をみせてくれるのだろう。 前半は「美術館とコレクション展示の全体像」について、後半は「期待する大阪中之島美術館像」について、まとめてみた。

ブラックキューブ建築に潜入

JR福島駅から徒歩で約15分ほどだった。 中之島リバーサイドを越えて、国立国際美術館へ向かって歩くと、以前はなかった漆黒の建物が見えてきた。 各種メディアで事前に見ていたブラックキューブ型の建築だが、中之島のモダンなビル群たちに意外にも溶け込んでいる。

大阪中之島美術館入口

人がいないときを見計らって、なんとか外観写真を撮ることができた。

大阪中之島美術館建物

5階建ての建物で、展示室は4階の5階の2フロアになる。 ホール、ワークショップルーム、多目的スペースにも面積が割かれているようだ。

フロアマップ

建物内に入ってみる。

無機質でモダンな壁面は統一がある。 密室的でいて、モノクロームに映える空間。 写真を撮るにも、構図をつくりやすい。

玄関通路

チケット売場を経て、エレベータを登って展示室へ向かう。 この瞬間がとてもワクワクする。

展示室に向かうエレベーター

Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり― 100個目のものがたり

さて展示会場へ。

国内外の近現代美術作品を6000点収蔵しており、その中の400点を今回展示するという。 中心となっている佐伯祐三作品をはじめ、バブル期にコレクションされた海外スターたちの作品も一堂に公開されていた。

展示室入口

1. コレクションの出発点である希代のコレクター・山本發

日本の近代絵画を中心に展示。 佐伯祐三作品群はコレクションの中心的な存在で、大阪市立美術館でも何度か企画展が開かれていた。 小出楢重小磯良平ら、関西出身の日本近代画家の作品が見れるのがうれしい。 個人的に印象に残ったのは、前田藤四郎の版画作品。「リノカット」という技法が生かされていて、名品揃いだった。

▼佐伯祐三《郵便配達夫》 ポスターに掲載する主要作品は写真OKのよう 佐伯祐三《郵便配達夫》

2. モディリアーニからバスキアまで、所蔵品を代表する作品が集結

近現代の著名海外作家の作品を中心に展示。 おそらくバブル期の日本がまだ”お金持ち”だった時代の基金で購入されたものだろう。 モディリアーニ、バスキアが目玉になっているが、ダリ、マグリットなど20世紀を代表する抽象画も展示されている。 個人的に好きだったのは、マーク・ロスコ《ボトルグリーンと深い赤》モーリスルイス《オミクロン》だろうか。 この2作品はWEBやポスター上では良さが伝わらないので、ぜひ展示会場でみてほしい。 杉本博司、草間彌生、森村泰昌ら日本現代美術家の作品も、数点ずつだったが置かれていた。

▼モーリスルイス《オミクロン》 なんともタイムリーな作品名 モーリスルイス《オミクロン》

3.クラシック・ポスター、家具コレクションも

サントリーポスターコレクションと、家具コレクションを中心に展示。 サントリーミュージアム天保山に所蔵されていたロートレックらのポスターが大阪市に寄付されたことで、コレクションに加わったようだ。 ポスター、家具コレクションがこれほど多くあるとは知らなかったので、意外だった。 家具のコレクションがまとまっているなら、工芸品のデザイナーが喜びそうな企画展も可能かもしれない。 出展作品400点を一度に鑑賞するというのはなかなかハードなもので、後半は少し息切れした。

▼主な展示作品
https://nakka-art.jp/untold-99-stories/

中間スペースでは中之島の街並みが見渡すことができ、リフレッシュできた。 この日は天気も良く、良い眺め。

中之島リバーサイド

【グッズ】佐伯祐三《郵便配達夫》パスケースがいい!

開館直後ということもあり、ミュージアムショップは賑わっていた。 大阪出身の松本セイジ氏による開館記念のイラストがあしらわれたグッズ群が目立っていた。 私も写真のパスケースを思わず買ってしまった。佐伯祐三《郵便配達夫》をモチーフにしたイラストがかわいらしい。 タブレットがちょうど入るサイズで気に入っている。

松本セイジ氏デザインパスケース

大阪中之島美術館に期待すること

2月11日の開館記念シンポジウムでは、日本の近現代美術館の目指すべき方向性について、熱い議論が交わされた。

nakka-art.jp

アーティゾン美術館や愛知県立美術館の近況を聞くことで、大阪中之島美術館へ期待することがみえてきた。 パネリストの意見と重なる点もあるが、私は以下の3点を期待したい。

  1. 若手アーティストの収集
  2. 6000点のコレクションを生かした企画展示
  3. シンボルとなる名作の常設展示

若手アーティストの収集

愛知県立美術館では、3年間で3億円の予算を使って若手アーティストの作品をコレクションするプロジェクトを行っているようだ。 バブル期の日本が”お金持ち”だった時代は、海外の著名作品が気軽に買えたかもしれない。 しかし円安ドル高が進み、アートバブルが加熱する昨今、海外のコレクションが増えていくことに期待はできない。

ならば原点回帰で、関西の若手アーティストの作品をしっかり確保したほうがいいのは間違いない。 「アーティゾン美術館にとっての青木繁作品」のように、将来的に評価されるアーティストは、日本にも、関西にもきっといるはずだ。

6000点のコレクションを生かした企画展示

美術館設立時に6000点のコレクション数があるということは、それだけバリエーションある展示ができるということ。 4F,5Fと展示室の面積も広く、近現代美術の企画展もスペースを気にすることなく巡回できそうだ。

今年はモディリアーニ、岡本太郎とアーティスト単体での企画展が予定されているが、東京方面で開催された展示会もどんどん関西にやってきてほしい。むしろ、大阪市立美術館で開催された”メトロポリタン美術館展”のように、関西発で東京へ向かうような企画展が次々と行われることを期待したい。

シンボルとなる名画・名作の常設展示

「この美術館へ行けばこの作品に出会える」というような、定番の常設展示ができてほしい。 SOMPO美術館のゴッホ《ひまわり》のように、いつだって名画・名作を見られるというのは、観光スポットとしては大きな魅力になるだろう。 20世紀美術のコレクションも多いので、歴史を俯瞰できるような展示があってもおもしろいかもしれない。


個人的な意見をつらつらと書いてしまったが、このご時世にも関わらず展示は盛況で活気を感じた。 大阪の新アートスポットに多くの人が期待を寄せていることがうかがえた。

2022/02/19

【愛好レシピ本5選】ステップアップのためのスパイスカレー読本

衝撃的なカレーレシピ本に出会った。
本格的なインドカレーが「だいたい15分」で作れてしまうとという。

東京神田の名店「エチオピア」でスパイスがギンギンに効いたカレーに打ちのめされて以来、約7年。 私は「いかに美味しいカレーをつくれるか」について、週末に家で格闘を続けてきた。 その過程で、何冊ものスパイスカレーレシピ本を、手にとっては試し、手にとっては試しを繰り返した。

本書は、その中でも「手軽さ」ではおそらく群を抜いているだろう。 約1時間ほどかかっていたが調理工程が、極限まで削ぎ落とされ「たった15分」に短縮されたのだから。

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映画『コーダあいのうた』をみてきた

映画『コーダあいのうた』をみてきた。 主演のエミリア・ジョーンズの歌が伸びやかですばらしく、また登場する名曲の数々も楽しく、前評判通りの爽快な感動作だった。


www.youtube.com

ハイライトは、最後に家族に向かって歌われる「Both Sides Now」だろうか。 以前から好きだったジョニ・ミッチェルの名曲が、映画をみたことでさらに好きになった。

「Both Sides Now」の歌詞に沿って、映画の感想を振り返ってみる。

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【1億総反応時代を生き抜く方法】自分の意見で生きていこう(ちきりん・著)

発売前から楽しみにしていた1冊だ。

毎日の10分間Voicyも絶好調なちきりん氏による、「現代を生きぬくための根幹の能力」を解説するベストセラーシリーズ。 最新作であり、4部作の完結作。

まるで自らのノウハウの手の内を明かすかのように「自分の意見を言うこと」に関してわかりやすく説明してくれていて、あっという間に1冊読めてしまった。

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【図録充実、注目の展覧会】 メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

昨年末、大阪市立美術館で開催中だった「メトロポリタン美術館展-西洋絵画の500年-」へ行ってきた。

メトロポリタン美術館展入口

メトロポリタン美術館(THE MET)が所蔵する2500点以上の西洋絵画の中から、選りすぐりの65点を展示。そのうち46点は日本初公開という貴重な展覧会。

メジャーリーグのオールスターたちが、(初来日を含めて)一挙に日本にやってくる!!みたいな感じでしょうか。これは見逃せまい。

展示会へ行ってよかったことは、西洋美術の宗教画の楽しみ方がわかってきたということ。西洋絵画というと、中世までは聖書の一場面を描いた宗教画が主流で、「とっつきにくいなぁ」という印象だった。

けれども、16世紀、17世紀の絵画でも目の前に立って細部まで眺めてみると、その表現の緻密さというか、素人でもわかる画家の力量に驚かされた。これはきっとネットや写真でコピーされた絵画を見ているだけでは気づかない。「本物を前にすることの凄み」が伝わってきた。

なるほど。これが名画たる所以なのか、と。

「選りすぐりの65点」ということで、本場の魅力をギュッと凝縮して届けられており、コアな美術ファンでなくとも十分楽しめる内容になっている。

大阪市立美術館での展示は終わってしまったが、2月からは東京国立新美術館での展示もある。未体験の方はぜひともこちらで行ってほしい。

以下、鑑賞前に参考になればというトピックスを掲載しておく。

  • 講演「メトロポリタン美術館展 西洋絵画が語り始める」
  • 図録が充実
  • パブリックドメインを活用しよう
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