昨年末、大阪市立美術館で開催中だった「メトロポリタン美術館展-西洋絵画の500年-」へ行ってきた。
メトロポリタン美術館(THE MET)が所蔵する2500点以上の西洋絵画の中から、選りすぐりの65点を展示。そのうち46点は日本初公開という貴重な展覧会。
メジャーリーグのオールスターたちが、(初来日を含めて)一挙に日本にやってくる!!みたいな感じでしょうか。これは見逃せまい。
展示会へ行ってよかったことは、西洋美術の宗教画の楽しみ方がわかってきたということ。西洋絵画というと、中世までは聖書の一場面を描いた宗教画が主流で、「とっつきにくいなぁ」という印象だった。
けれども、16世紀、17世紀の絵画でも目の前に立って細部まで眺めてみると、その表現の緻密さというか、素人でもわかる画家の力量に驚かされた。これはきっとネットや写真でコピーされた絵画を見ているだけでは気づかない。「本物を前にすることの凄み」が伝わってきた。
なるほど。これが名画たる所以なのか、と。
「選りすぐりの65点」ということで、本場の魅力をギュッと凝縮して届けられており、コアな美術ファンでなくとも十分楽しめる内容になっている。
大阪市立美術館での展示は終わってしまったが、2月からは東京国立新美術館での展示もある。未体験の方はぜひともこちらで行ってほしい。
以下、鑑賞前に参考になればというトピックスを掲載しておく。
講演「メトロポリタン美術館展 西洋絵画が語り始める」
私が行った日は、幸いにも篠雅廣館長による「メトロポリタン美術館展 西洋絵画が語り始める」と題した講演会を聞くことができた。 展示会の開催に至った経緯などが説明されたあと、展示されている絵画の楽しみ方なども教えていただき、より理解が深まった。
プレゼンで印象に残ったのは、500年かけて何が変わっていったのか、ということ。
展覧会のテーマは「主題の変遷」であり、西欧絵画のテーマが神話・宗教画から世俗画(静物、風景)へ変遷していくことに注目してほしい。また「西欧絵画の500年」とは、主題の変遷から消滅への歴史であったともいえる。
(篠雅廣館長講演より)
(プレゼン資料より引用。一部改変。)
古代はキリスト教の聖書を伝えるためのものとして描かれた絵画が、中世に向かうにしたがって主題が世俗的なものへと変化していく。 近世、近代に向かうと風景画や静物画などが描かれるようになり、「画家に何がみえたのか」を主題として描き出すようになる。 そして、やがてはテーマが消滅して20世紀の抽象絵画へ向かう。
館長もおっしゃられていたが、選りすぐりの絵画の中でも、横綱格はルーベンスとレンブラントだろうか。 この二人の作品は濃厚すぎて、細部まで見ていても全く飽きることがなく、私は絵の前で長い間立ち尽くしていた。
ピーテル・パウル・ルーベンス《聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者ヨハネ》
図録が充実
展示内容があまりにも良かったので、後日楽天ブックスで図録も購入した。 (ミュージアムショップで購入すると荷物になるので、図録は通販が普及してほしいですね。)
注目したい絵画については、絵画全体と注目ポイントの拡大と、2ページに掲載している。 緻密な描写で描かれる西洋美術の真髄を図録で味わうには、ありがたい配慮だと思う。
パブリックドメインを活用しよう
THE METのWEBページでは、約37万点がパブリックドメインとして公開されている。
https://www.metmuseum.org/about-the-met/policies-and-documents/open-access
クリエイティブコモンズでの公開ということは、無料でブログ等にも素材として活用できるということ。
調べてみると、今回の出展作品の大部分が「OA」表記があり、パブリックドメイン公開されていた。
これは活用しない手はないね!
Notionのカバーアートなんかにも、お気に入りの絵を入れてみてもいいかもしれない。
そんなわけで、「展示よし、図録よし、WEB公開よし」と、「三方良し」で楽しめる展示会でありました〜。
▼図録は楽天ブックスで購入した