ゆるストイックという生き方について

先日、あるYouTubeチャンネルが突然おすすめに出てきた。1ヶ月ほど前から佐藤航陽さんが始めた「佐藤航陽の宇宙会議」である。2025年4月現在で6,7本の動画が公開されており、宇宙や仮想現実という壮大なテーマから、過去の自身の起業経験や日常の小さな習慣まで幅広いテーマを扱うチャンネルで、動画が公開されるのが楽しみになってきた。

このチャンネルがおもしろかったので、彼の著書「ゆるストイック」も同時に読んでみることにした。

「佐藤航陽の宇宙会議」がおもしろい

最初にYouTubeチャンネルのおもしろさについて少し紹介したい。

www.youtube.com

「宇宙会議」というタイトルが示す通り、このYouTubeチャンネルでは仮想現実と宇宙空間を主なテーマとしている。しかし、その内容は決して狭い専門領域に留まらない。脳科学者、テック企業の起業家、宇宙物理学の研究者など、様々な分野のエキスパートを招いた対談は、一時間近くに及ぶこともあり、専門的な内容についてたっぷり知見を聞くことができる。

また一人語りの動画も十分に楽しめる。特に視聴者からの様々な質問に矢継ぎ早に答えていくQ&A会が、彼の考え方を明確に示していて好きだ。 最初に視聴するならこれがおすすめだ。

【🤖】佐藤航陽が質問に答えまくる回:人工意識とデジタル遺伝子、世界を支配するもの、起業のコツ、輪廻転生と物理宇宙、最強メンタル術、自分の変え方など。https://youtu.be/el1IcIYiW4c?si=zJFjkKR45NZE8N10

独自性×フリーライド

次に書籍「ゆるストイック」で印象に残った部分について。

「ゆるストイック」という言葉は、一見矛盾しているようにも思える。「ゆる」という緩やかさと、「ストイック」という厳格さが同居しているからだ。しかし、佐藤さんが指し示すのは、大谷翔平選手や藤井聡太さんのような、自分で決めた目標に対して真摯に向き合いながらも、他者に強要することなく自分のペースを保つ生き方である。

この本の中で特に心に残ったのは、成功への道筋を「独自性×フリーライド」という方程式で表現している点だ。佐藤さんは成功には「運」の要素が強く影響すると述べつつも、その運を引き寄せる方法として、この方程式を提案している。独自性とは、「好きなこと」「得意なこと」「需要があること」の3つの要素が重なる領域のことである。佐藤さんは、この3つの要素を見つける順番が重要だと強調している。

まず最初に「好きなこと」を自分との対話によって見つける。これは内省的なプロセスであり、自分自身の心に耳を傾けることから始まる。次に「得意なこと」は、周りの反応やフィードバックから理解できるものだ。自分では気づかない才能が、他者の評価によって明らかになることもある。そして最後に「需要があること」だが、これは社会の動向や経済、競合相手などとの関係で変動するものだ。

この3つの要素が重なる領域を見つけることで、自分だけの独自性を確立できるのだという。そして、この独自性に「フリーライド」を掛け合わせることで、「運」を成功に結びつける可能性が大きく広がる。ここでいうフリーライドとは、大きなプラットフォームの力を借りるという意味である。例えばYouTubeやSNSといった既存の巨大メディアに自分の独自性を乗せることで、より多くの人に届ける可能性が生まれる。

この考え方は、現代を生きるうえで示唆に富んでいる。かつての成功は「正規分布の世界」で語られることが多く、努力すれば平均的な成功は手に入るというものであった。しかし、インターネットの発達により、「べき乗則の世界」へと移行しつつある。つまり、一部の人や作品に爆発的な注目が集まる一方で、大多数は埋もれてしまうという現象だ。

この「べき乗則の世界」で生き残るためには、自分の独自性を見極め、それを適切なプラットフォームに乗せて発信することで「運」に任せてみるということも必要なのだ。

自分の独自性を磨くには

「ゆるストイック」という考え方に触れて以来、私も自分自身の独自性について考えるようになった。「好きなこと」「得意なこと」「需要があること」の3つの要素が重なる領域を探し始めた。 この基準で自分を見つめ直したとき、浮かび上がってきたのは「文章を書くこと」だった。まず「好きなこと」として、構想を練ったり、アイデアを発展させたり、読書から得た知識を整理したりする過程は、私にとって決して苦ではないし、毎日少しずつ時間をかけるなら飽きない。

次に「得意なこと」として、この10年間、形は様々だが、私は文章を書き続けてきた。すべてを公開してきたわけではないが、時折ブログとして発信したり、何らかの形で執筆したものが他者の目に触れる機会もあった。そして、稀にではあるが、「よかったよ」「おもしろかったよ」という言葉をもらえることもある。

最後に「需要があること」だが、私の書く文章にそれほど需要があるとは思えない。しかし佐藤さんも述べているように、需要は社会状況によって変動するものであり、自分自身で完全にコントロールできるものではない。大切なのは、好きで続けられることを軸に置きながら、社会の変化に目を向け続けることだろう。

これからも「宇宙会議」チャンネルのアップを楽しみにしながら、自分自身の「ゆるストイック」も追求していきたいと思う。