図書館とカーリルの魅力について

日経新聞のコラムで、フランス文学者の野崎歓さんが放送大学附属図書館の館長に就任されたことをきっかけに、図書館での思い出を語っておられる記事を読んだ。有料版の記事なので購読している人しか読めないけれど、思いがけない本との出会いについて書かれた心温まる内容だった。

図書館を巡る冒険

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私自身も、最近は図書館によく足を運ぶようになった。きっかけは子どもの絵本探しだったが、いつの間にか自分の読みたい本を探す楽しい場所にもなっている。後で紹介する蔵書検索横断サービス「カーリル」や、図書カードの電子化でスマホだけで済むようになったりと、利用のハードルが下がったこともあって、より身近な存在になった。

図書館の魅力について

同じテーマの専門書を複数同時に読める

図書館の魅力は、一つの専門分野を複数の書籍から横断的に学べることだと思う。先週、話題の画像生成AIの著作権問題が気になって、地元の図書館で関連する専門書を3冊ほど借りてみた。複数冊を並べて眺めていると、その分野の重要なポイントが浮かび上がってくるような感覚がある。専門書は高額な本も多いから、気軽に購入するのはちょっと躊躇してしまう。その点、図書館なら複数の関連書籍を一度に借りられて、専門分野の「大枠をつかむ」のにぴったりだ。

期限付き読書の意外な効用

図書館の本には返却期限がある。大体2週間程度の貸出期間が設けられているけど、この「締め切り」が意外と積読防止に役立っている気がする。自分の本だと「いつか読もう」と先送りにしがちだけど、返却日という明確な区切りがあると、その期間内に読み終えようという気持ちが自然と湧いてくる。

もちろん、すべての本がこのやり方に合うわけではない。特に小説はじっくり時間をかけて読みたいときもあるし、期限を気にせず読める方がいいこともある。だから小説については、いつでも読めるようKindle端末に入れておくことが多い。ジャンルによって、図書館向きの本と、Kindle向きの本があるように感じる。

蔵書横断検索サービス「カーリル」の魅力

図書館利用をもっと便利にしてくれているのが、蔵書横断検索サービス「カーリル」である。このサービスは、登録した複数の図書館の蔵書情報を一度に検索できるという、画期的なシステムだ。

カーリル

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特に地方では、蔵書が複数の図書館に分散していることが多い。私の住む奈良県南部も例外じゃなくて、探している本がどの図書館にあるのか、以前は一つひとつ検索する必要があった。カーリルはこの手間を大幅に減らしてくれて、効率よく図書館を使えるようになった。

驚くのは、こんな公共サービスを横断するプラットフォームを、民間のベンチャー企業が作って運営しているという点だ。公共と民間の境目を越えたこの取り組みは、デジタル時代における図書館の新しい可能性を見せてくれているように思う。

カーリルは以前、openBDという書籍データベースのAPI提供もやっていた。しかし、収益化や版権問題の壁があったのか、プロジェクトが中断している。公共性の高いサービスを民間が提供するというのは、難しさもあるのだろう。今後どうなっていくのか、注目したい。

新しい形の図書館利用

図書館によく通うようになって感じるのは、そのサービスも着実に進化しているということ。最近では図書カードはスマホで見せられるし、本を置くだけでバーコードを読み取って、セルフで貸出返却もできるようになっている。

カーリルのような蔵書検索サービスがあれば、近くの市町村の図書館に足を運んでみようという気になる。活字本の需要が減っていく中で、図書館のような公共サービスに求められるものも変わってきているのかもしれない。デジタル技術をうまく取り入れて、使いやすさも高めながら、これからも図書館は進化し続けてほしいと思う。