海外文学

『遠い山なみの光』記憶を乗り越えるための物語

カズオ・イシグロの著作は、代表作『日の名残り』や『クララとお日さま』も好きで、他の作品も読みたいと思っていた。『遠い山なみの光』というタイトルが良くて、ずっと気になっていた。 2025年秋ごろに広瀬すず、二階堂ふみという豪華主演で映画化されると…

コロナになった私はグレゴール・ザムザのようだった

まだ寒さの残る二月の末のことである。私はこの後に及んで新型コロナウイルスに感染した。特にニュースで感染症が流行しているという報道もなく、年末のインフルエンザ流行期とも外れていたというのに。 それから私は5日間の引きこもり生活を余儀なくされた…

『ヒルビリー・エレジー』は禁書にせず読まれ続けてほしい名作

ヴァンス副大統領の著作『ヒルビリー・エレジー』が国防総省の図書館で禁書処分になるかもというニュースが流れてきた。ドイツでは大統領選挙の結果を受けて版権を更新しないという事態も起きているという。 ヴァンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁…

【破滅的な芸術家の一生】楽園への道(マリオ・バルガス=リョサ ・著、田村 さと子・訳)

ポール・ゴーギャンはフィンセント・ファン・ゴッホと並ぶポスト印象派のフランス人画家として世界的に知られている。けれども名画の輝きとは対照的に、その生涯は破滅的な一途をたどるものだった。 本書はゴーギャンと、その祖母である革命家フローラ・トリ…

【豪華新装版】センス・オブ・ワンダー(レイチェル・カーソン著 上遠恵子・訳 川内倫子・写真)

レイチェル・カーソンの晩年の名著「センス・オブ・ワンダー」が、新潮文庫より装丁を新たに出版された。 センス・オブ・ワンダー(新潮文庫)作者:レイチェル・カーソン新潮社Amazon カーソン氏の詩的な表現と呼応するように川内倫子氏の写真が散りばめられ…

【タイムリーな話題作を読む】クララとお日さま(カズオ イシグロ・著、土屋政雄・訳)

カズオ・イシグロ、ノーベル賞受賞後の最新作。 4月の発売以来、本屋で見かけるたびに、ひまわりと女の子の可愛らしい表紙に名作感が漂っていて、ずっと気になっていた。 テーマは人工知能とヒューマニティということで、著者がどんな未来を描いてくるのか、…